HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
#15 俺に悪戯をさせる君が悪い(side暖人)
 翌日も舞は朝からそっけない態度で、俺はさすがに傷ついていた。

 勿論俺は昨日と全く同じように舞の板書を取る手が止まるたびに、見えないところを読み上げている。だが、どうも舞の態度がおかしい。

 俺が舞のほうへ身を寄せようとする気配だけで、彼女はピクリと反応しすぐさま退ける。その反応の速さと来たら俺の心を読んでいるかのような俊敏さだ。意外と反射神経いいんだな、と感心するほどに、ね。

 普段は彼女の周りだけまるで別世界のような空気だというのに、今はその空気は全く感じられない。むしろ俺をよけるためにピリピリとした空気を漂わせていた。

 ずっと舞は俺に対して無関心なのだと思い込んでいたが、もしかするとそれは勘違いだったのかもしれない。

 ならば、考えられる可能性は二つ。



 ――俺のことが好きか……嫌いか……。



 俺は思わず頭を抱えた。

 たぶん、いや、間違いなく後者だ。どう考えてもこれは好意的な態度には見えない。

 だけど他のクラスメイトのように存在すらも認識されていないよりはマシかもしれない。少なくとも俺のことは意識しているわけだし。



 ――だとしても傷つくって……。



 まさかいきなりこんなふうに嫌われるとは思わなかったので、正直なところムカついた。

 俺、何か嫌がられるようなことした? むしろ黒板の字を読んであげたり、めちゃくちゃ親切にしてると思うけど。
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