HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 そんなことを頭の中で繰り返し自分に言い聞かせているうちに授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。

 もう涙もほとんど乾いていたので鼻をすすりながら顔を上げた。

 隣の席のソイツが大きな声で

「起立!」

 と言った。そういえば授業の始めと終わりの号令は日直の仕事だった。眼鏡を拭きながら立ち上がった。何気なく隣を見ると、一瞬彼もこちらを見た。

 視線が合って、ドキッと心臓が跳ね上がった。

 清水くんも驚いた顔をしている気がした。……眼鏡をかけていないから自信はないのだけど。



 ――いかんいかん! 今の私に色恋は無用。むしろ邪魔。そんなことしてる場合じゃない。



 そう思った瞬間、胸がぎゅっと切なく縮んだ気がした。
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