HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 何を隠そう、私はお姉ちゃんにもらった四葉のクローバーを窓から捨てようと思っていたのだ。なんて絶妙なタイミング。

「それより俺に教えてほしくない?」

 何ですか? その誤解を招きそうな表現? しかも日本語としておかしいでしょ。目的語を端折るな!

「数学……でしょ? それは……」

 ――……教えてほしいけど。

 清水くんは意味ありげな笑みを浮かべた。こ、怖い! 私の顔に書いてある本心を読まれたのだろうか。



「じゃあさ、俺のウチと図書館とどっちがいい?」



 ――そんなの……

「図書館!」

 ――に決まってるじゃないか!



 私は迷わず即答した。冷や汗が背中に垂れる。逆に心臓はオーバーヒートしていた。

 清水くんはまたクスッと笑って

「そう言うと思った」

 と言いながら私の隣に立った。外を見たかったのか、窓枠に手をかけて遠くを見ているようだ。

「じゃあ、土曜日ね。期末テストは来週だから間に合うでしょ?」

 私のほうを見ずにさらりと言った。

 今日は木曜日だ。ということは、明後日……。

「OK?」

「……うん」

 清水くんが私を見下ろす気配がした。うわー! そう思っただけで勝手に顔が赤くなる。誰か止めて!

 彼が去っていく後姿を見てホッとしたところに、誰かが近づいてくる気配がした。
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