【完】イケメンカフェ -幸せな一瞬(とき)をあなたに-


「無理しなくていいから」


まただ、あの優しい声。
そう思っていたら、そのまま抱きしめられた。
彼の肩から鎖骨に顔を押しつける感じになっている。
ふわっと香る香水と、強く引き寄せる腕と。
よくわからないけど、すごく安心して身体の力が抜けた。
震える身体に、碧が気付いたように更に強く抱きしめる。
まるで、俺が居ると言わんばかりに。


ようやく分かった、これが恋なんだと。
あの日から逃げていた気持ちに向き合ってみれば、身体は素直になった。
そのまま、そっと彼のシャツを握った。
ふっと、彼が笑った気がする。
それから心臓はドキドキと音をまた立てた。








どれくらい経ったのだろうか。
身体の震えが収まり、恥ずかしくなった私はそっと離れた。


「落ち着いた?」


「はい。すみません」


こういう時、年下だとたとえお店では先輩でも敬語になるんだよね。
なんて無理矢理、違うことを考えてみるものの。
碧の視線に耐えられそうにもなくて。






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