出会いから付き合うまで。
 ベッドに寝そべりながら、あたしはメールを打つ。相手は吉本君。何で意中の人でなく、吉本君なのかって? ふふん。それには海よりも深い事情があるのよ。アドレス交換したとき、吉本君からは赤外線通信をもらったけど、あたしからは送信していなかった。つまり、吉本君のアドレスはゲットしたけどあたしのアドレスは送ってなかったわけ。自分だけ吉本君のアドレスを知っていてもしょうがないので、あたしは早速メールを送信しているの。家についてからそのことに気が付いて、慌ててやっているのは内緒。
 草加君とはメールを送受信している。
 その事実がどれほどあたしを落胆させていることか。つまり、もうこれで草加君にメールを送る口実が無くなった、ということだ。肩が落ちすぎて床に届きそうだわ。
 でも。本当にあたしは草加君のことが好きなのだろうか。好きってどういうことなの? 人を好きになるって、どうなることなの? 好きって言う感情がよく解らない。本で読んだ好きという感情は、相手のためなら自分がめちゃくちゃになっても良いと思える感情の事だったり、相手を労わって慈しんだり。そういうのを愛だとか言うのだとはわかる。好きはその前の段階。まだ若い愛。だからあたしはまだ、草加君に対して好きなのかどうなのかわからない状態。
 そんなことを考えながら、吉本君にメールを送る。「登録よろしくお願いします。あれからお客さん、来ましたか?」と打ち込んで送信ボタンを押した。暫く経ってから、いつもの着信音が鳴り響き、メールを受信したことを告げる。返信メールだ、と思ってメールを読む。結局、あれからお客さんは来ず、暇です、という内容だった。
『アド教えてくれてありがとうございます。これから仲良くしてください。』と、締めくくっていた。
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