Steady
見えない糸
ひっそりと

冷たい空気が流れる、

誰もいない家。


私はあの後、

澪と別れて1人電車に

揺られて帰ってきた。


まだ考えのまとまらない私を

澪は心配し、

「一緒に帰ろう」と

申し出てくれたのだけれど、

これ以上、澪の優しさに

触れてしまったらいけないと

心のどこかで感じ、

不器用な笑顔を見せて

店を出てきた。


自分の部屋に入って

カーテンを開ける。


そのままベッドに

横になろうかと思ったけれど、

思い直して反対側にある

机に向かってちょこんと座った。


ベッドには幼い敦が残した

メッセージが刻まれている。


今、その近くへ

行ってしまったら、

私の心がまた揺れ動いて

しまいそうだ。


小さく一つ息を吐くと、

机の上にあるパソコンを

立ち上げた。






< 281 / 342 >

この作品をシェア

pagetop