御曹司なんてお断りっ◆

苦い

＊＊＊

朝日がまぶしい。

俺はいつもの窓から見えるいつもの景色を
ゆっくりと眺めていた。

がちゃっ

「－！！来てたんですか？
　早いですね？」

「－あぁ。コーヒー飲むか？」

武は、眉間にしわを寄せて　はぁーーっとわざとらしくため息を吐いた。

「…おはようございます。
　あさがえりなんですね？昴様？」


優秀な秘書はさすがに
スーツが昨日のモノだと一瞬でわかったらしい。

さすがだな。


武は無言で一度退室してから
すぐに戻ってくる。

手には、スーツを携えて。


「…お着替えください。」

「ありがとう。用意がいいな。」

「…当たり前です。何年あなたの秘書をやってるとお思いで？」

武は俺にグレーのスーツを押し付けると、
部屋の角にあるスペースに俺を押しやった。

急なパーティや
法事などにもすぐに行けるように
常務室にはメイクルームが設けられている。


俺は昨日来ていたスーツを脱いで
武の持ってきたスーツに着替える。

昨日のスーツからは
ふんわりアルコールのにおいと志保の匂いがした。