し・せ・ん
「さっきから何を見てるの?」

 横顔の彼女に問いかけ、俺も夜景を見る。

 俺は子供だ。夜景なんて何一つおもしろくない。そう思って視線を左にずらしたときだ。

「あっ」

 彼女のその声と同時に、ガラスの中の彼女と目が合った。

「やっと、目が合った!」

「……」

「ずっと見てたんだよ」

 ガラスの中の彼女が照れて笑っている。ガラスの中で俺たちはみつめ合った。

「俺もずっと見てたよ」

「うん」

 彼女の顔がグラスの中のワインのように、ほのかに赤くなった。 

 夜景なんかどうでもいい。この瞬間から完全におれのすべては彼女のものだ。



 END
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