ウラもオモテも
「何って……。今日の会社でのことですよ」


「それって、俺のこと?」


 わくわくした目で私を見てくるから、つい意地悪したくなっちゃう。


「今日、会社で会ってませんよね?」


 彼は断りもなく私をその腕の中に抱き寄せた。
 壊れ物でも扱うかのように、そおっと。


「どうして会いに来てくれなかった?」


 耳に注がれる声は確かに部長の声なのに、まるで別人が発しているかのような甘ったるさを孕んでいる。
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