意地悪LOVER





最悪だ、最悪だ。


学校に着いてどんなに唇を擦っても、あの時の嫌悪感は一向に収まらない。
収まるどころか、さらに増してくる。


何でキスされたんだろ?


そればっかりが頭の中に過ぎってる。


すると、その時。
後ろから肩をポンっと叩かれた。



「…!…大地!!」


そこに居たのは、紛れもないあたしの大好きな人。

"近藤大地"

かっこいいのもいいんだけど、いつも優しくてすごく穏やかな人。
一緒にいるだけで癒されるの。


「おはよっ!ひかり」

「お、おはよう!」


さっきのこともあり、あたしはちょっと動揺して挨拶を返す。もちろん口に手は当てたままで。


「口、どうかしたのか?」

「え!?」

「もしかして、荒れてんの?見せてみ?」


そう言って、大地は少し強い力であたしの手をどける。
大地に触れられた緊張であたしは意図も簡単に手をどけてしまった。


「うお!?赤くなってんぞ?」

「…えへ。ちょっとかゆかって…」


苦し紛れの言い訳。だって、知らない人にキスされたなんて、死んでもいいたくない。

大地になんて、なお更言いたくないし、言えないよ。



「…あんまし擦ると、はれちまうぞ?」


優しくあたしの頭を撫でながら、微笑む大地の笑顔はもう最高!
どんどんどんどん、あたしの顔は真っ赤になっていくばかり。



「とりあえず、もう触るなよ?」

「ん。分かった!」

「よし!んじゃ、俺体育だから行くな」

「ばいばいっ!」


あたしはグランドへと向かっていく、大地の姿を見送ると自分の教室へとゆっくり足を進めた。


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