パラサイト ラブ
家族というもの

その日は生憎の雨模様だった。

俺は朝乃を助手席に乗せ、実家へと車を走らせていた。

途中の和菓子屋で栗ようかんを買い、緊張気味の朝乃を笑い話で和ませていると、あっという間に懐かしい家に到着した。



「―――ただいま」



玄関に入って声を張り上げると、家族の誰より先に駆けつけてくれたのは猫の“ちぃ”だった。



「あ、この子が飼ってる猫?」

「そう。ちぃって言うんだ。――おいで」



飼い始めた頃は子猫だったから、小さくて可愛くて、ちぃって名前を付けた。
でも今はもう小さくないし、少々太り気味で、抱き上げるとかなり重い。



「お前…またお隣さんから餌もらってないだろうな」



俺がちぃを睨みつけていると、奥からやっと母さんが出てきた。


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