パラサイト ラブ
「先に出て行ったのは…英の方じゃない」
運ばれてきたコーヒーの湯気を見つめながら私は言った。
今は龍ちゃんとの幸せな暮らしがあるのだから、過去のことをあまり思い返したくはないけど……
私はあの朝すごく傷ついたんだと、それだけは言っておきたかった。
「…出て行った、という訳じゃないんだ。あのときは、仕事が大切な時期だったから…あそこに出入りするのを控えようと思っただけで」
「……もういいよ。そもそも英、結婚してるんでしょう?私に言い訳なんかしてないで早く家族の待つ家に帰ったら?」
「………知ってたのか」
英はさして驚いたふうでもなく、コーヒーを一口すすると私をまっすぐ見つめた。