しあわせおばけ
妻は羽をパタパタさせて、リビングを出て行った。
と言っても飛んで行ったわけではなく、フワフワ歩く、と言ったほうが正しいだろう。
「紗希!」
「ひとりにして!」
追いかけようとした俺を制して、妻はすぐ隣の和室にこもった。
リビングがシーンと静まり返る。
―…なんだよ、せっかくふたりきりの時間が増えたっていうのに、こんなことで怒ったりして。
俺はぶつぶつ文句を言いながらソファにどかっと座って、新聞を広げた。
ヤキモチ?
ちくしょう。
かわいいじゃねぇか。