しあわせおばけ

俺は26歳のとき、派遣の女の子と社内恋愛の末に結婚した。

結婚翌年には明日香が生まれて、仕事も順調で、何もかもが楽しい日々だった。



だけどそんな幸せは長く続かず、結婚から7年経った昨年、妻はがんで死んだ。

闘病生活は短くて、がん発覚から死ぬまでは、本当にあっという間だった。



妻の病気がわかったときから、覚悟はしていた。

それでも実際そのときを迎えてみると、ショックは思ったよりも強烈に俺の心に襲い掛かってきた。

でも、俺って律儀だなと自分でも思うけど、百か日の法要を済ませたとき、もう泣き暮らすのはやめると誓った。

それが残された自分のためでもあり、明日香のためでもあるから。



だけどそんな俺の思いとは裏腹に、同僚たちは俺を見て、

「カラ元気なんてやめろよ、俺たちにもっと頼っていいんだぞ」

と言ってくれる。




< 11 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop