しあわせおばけ

見えなかったら、なんてことがあるなんて考えもしなかった。

だって俺にはこんなにくっきり見えるし、だいたい幽霊じゃないって言ったのは妻本人なのに。

「誰にでも見えるわけじゃないみたいなの。だから確証はないわ」

「そんな今さら…」

「言わなかったっけ?」

「言われたっけ…?」

記憶を呼び起こしても思い出せない。

「ま、どっちにしても相沢くんは来るんだし、見えるかどうかは一か八かね。じゃあ私、今から新人さんの案内しなくちゃいけないから、とりあえず戻るわ。また後でね」

妻はあっさりそう言うと、ひらひらと手を振って消えた。



…新人さん、つまりまた誰か死ぬってことか。

いったい世界中では、1日、いや1分にどれだけの人が亡くなるんだろう。

妻はいつも忙しげで、その姿を目にするたびにそんなことを考えてしまう。

暇にこしたことない職業は、医者と警察と天使ってとこか。




< 130 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop