しあわせおばけ
「これで信じてもらえたかしら」
広げた両手をゆっくりおろし、やさしく微笑む彼女を見上げながら、俺はなお、どういうトリックなのか考えていた。
「…どうやら、まだみたいね」
呆然としつつも訝しげな俺の顔を見て、妻(仮)は息を吐いた。
「だだだだって…」
だってだって、どう考えてもおかしいだろう。
「あ、あ、そうだ、足は?足があるじゃないか」
口をパクパクしながら俺は彼女の足元を指差した。
「足くらいあるわよ、人間だったんだから」
「でででも、幽霊なんだろ?!」
「幽霊は足がないなんて、そんなのただの人間が決めたキャラでしょ」
キャラって!
「死後の世界ってね、この世界と同じなのよ。足だってあるし体温だってあるの」