午前0時、夜空の下で
幼い頃から本が好きな心たちは、佐伯の屋敷を訪ねるとすぐに書庫に篭り、一日中読み耽っていたため、特に迷惑をかけることもない。

ただ、いつまで経っても書庫から離れようとしないと、心配をかけことはしばしばだったが。

佐伯自身は作家として働いているため、仕事上、洋館の中は多くの本で溢れ返っていたのだ。

奈美は心の言葉に微かな笑顔を浮かべたものの、ちらりと周囲を窺ってそっと囁いた。

「でも……最近、この近くでも多いじゃない」

奈美の言葉に、心も少し黙った。



一月ほど前からだろうか。

この平和だったはずの町で、凶悪な殺人事件が多発するようになったのは。

最初は数週間おきに無差別で人が殺されていたのに対し、今では毎日のように殺人事件が報道されている。

刃物で鋭く斬られていたり、首の骨を折られていたりと、殺害方法はさまざまだ。

中には獣の爪に掻き切られたような傷もあるという。

その殺害方法の特殊性から、事件は一気に全国民の知るところとなった。

テレビや週刊誌で何度も特集が組まれ、警察も捜査本部を立ち上げ全力で捜査しているものの、犯人は未だに捕まっていない。
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