午前0時、夜空の下で
佐伯の洋館に入り、心がどこか地下へ繋がる階段を下りた時までは覚えているのに、その後のことが一切思い出せないのだ。

心の記憶は黎で目覚めた瞬間から始まり、妃月とどのように出会ったのかがわからない。

ヒヤリと背筋に冷たさが走る。

覚えていなくても生活に支障があるわけではないが、掌から砂のように記憶が摺り抜けてしまったことがどうしようもなく不安を煽る。

そして、何よりも。

「何か、忘れてはいけない何かがあったような気がするのに……っ!!」

心は悔しげに髪を握り乱したが、記憶の欠片すらも掴むことはできなかった。






< 403 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop