午前0時、夜空の下で


――魔界――


「主が……主が黎にお戻りになる……」

「姫、よろしいのですか?」

夜陰に紛れ、漆黒の衣に身を包んだ彼らは密やかに言葉を交わす。

その中心にいる彼らの長姫は黙って空を見上げていた。

月は厚い雲に隠れ、ちらとも見えない。

否、月だけでなく太陽の姿すら、目にすることがなくなったのだ。

厚い雲が晴れる様子は一向に見られない。

あるべき魔界の姿が戻ってきたのだと主張する魔族もいるが、少女は光を望んでいた。

そう――真の主を。

「……我らにできるのは、主をお守りするだけ。そうだろう? 我らが姫よ」

彼らの中で一際背の高い黒い影が、口元に笑みを浮かべて問い掛ける。

祈るように閉じていた目を開くと、少女は周りに立つ者たちを見渡し口を開いた。

「その通りだ。我らが優先すべきは、主の意思。何を惑う必要がある。主が黎にお戻りになると言うのなら、我らはそれに従うだけだ」

凛としたその声に、少女を囲むようにして立っていた者たちは一斉に頷く。
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