午前0時、夜空の下で
「……綺麗な満月」

ガラス張りの天井から、冴え冴えと輝く月が心たちを見守っていた。

ふと、クロスリードから魔界について教わったことを思い出す。

『魔界では人間界のような、時間の単位は存在しないのです。時間は早く流れるときもあれば、遅く流れるときもある。
個人の感覚次第で、時は流れてゆくのです。ただ、一日の始まりは月によって判断します。
この城にある終の間という部屋の中央を月が照らした瞬間、一日が終わり、新たな一日が始まるのです。
……人間界で言えば、午前零時ということですね。終の間には陛下しかお入りになることができないので、ほとんどの魔族は日が沈めば日が変わる程度の認識ですが』

そうかここがあの終の間だったのかと、心は口元を綻ばせた。
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