午前0時、夜空の下で
妃月はそんな心を抱き上げると、寝室へと戻り、再び寝台に寝かせた。

「もうしばらく休んでいろ。今日は何もしなくていい」

ぼんやりと陶酔する心に、甘い誘惑が囁く。

愛でるように汗ばんだ頬を撫でられた。

「でも、今日はお客さまがいらっしゃるって……」

わずかに残る理性で、小さく呟いた。

そもそも、夜会があると言われたために、言葉遣いや礼儀作法などその他諸々をクロスリードから教わるハメになったのだ。

「言っただろう?好きな様に動いてみろ、と。お前が夜会に出たいというなら止めはしないが、嫌なら無理するな」

言い終わると同時に、妃月は立ち上がり出て行ってしまった。

「……」

夜会の開始は、真夜中。

心は妃月の残り香を宿す寝具に包まり、そっと目を閉じた。







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