午前0時、夜空の下で
「ココロ様、こちらの水鏡で、人間界を覗くことができるんです」

ザワリ、と。

胸騒ぎがした。

大きな皿の中には、澄んだ水が溜められている。

水鏡の横に立ったメイジーが、心を促した。

「……やっぱり止めておく、メイジー。見たいときは、妃月さまに頼むから」

震える声で、心はそう漏らした。

嫌な、予感がする。

自室に戻ろうと踵を返した心を、彼女は引き止めた。

「お母様が、お倒れになったようですけど」

一瞬息を止めた心は、慌てて水鏡を覗き込む。

映っていたのは、黒い影。

驚いて顔を上げようとした次の瞬間、ザバリと水が持ち上がり、心は悲鳴を上げる間もなく鏡の奥へと引きずり込まれた。
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