午前0時、夜空の下で
不満げな声に、心は目を瞬かせる。

……妃月さまだ。

いつの間にか解けていた黒いリボンを見つめ、唇を噛み締める。

――こんな場所で汚され、死ぬわけにはいかない。

伸びてきた男の手を、心は決死の思いで払い落とした。

震える足を叱咤して、背筋を伸ばす。

「来ないで!!」

手の甲からは、払い落とした瞬間に男の爪が当たったらしく、鮮血が滲み出ていた。

真っ赤な血が汚れた地下牢の床を汚す。

落ちてしまったリボンを拾い、どうやって逃げようかと頭を上げて――変化に気づいた。

「な、何……?」

どの男も、壁にぐったりともたれ掛かっていたのだ。
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