君がいた夏

幼なじみ





私たちは幸せにひたってた。
そう、すべてが上手くいきすぎていて
目の前にある壁にすら気づけていなかった。

ううん。
気づかないふりをしていたのかもしれない。



クリスマスが近づいてきている町中をいつものように
先輩の横を歩く。

「イルミネーション綺麗だろうなぁ」
「夜?」

私がふと、呟いた言葉に先輩が笑う。

「はい……こういう暗いなかに綺麗に光るものが、好きなんです」
「そうなんだ」

先輩は大きいクリスマスツリーを見上げる。

「クリスマス、見にこようか」

先輩がクリスマスツリーを見上げながら言った。

「え、いいんですか?」
「うん、当たり前だろ」

嬉しくて私は思わず先輩の目を見て笑ってしまう。

「先輩、ありがとう」
「いーえ、菜穂ちゃんと過ごせるのが俺は嬉しいから」

さらっと先輩は私が照れることをいう。

「っ………私も、先輩と過ごせるのが嬉しいです」
「………うん」

私たちはゆっくり手を繋いで歩き出した。




「ただいまー」
「お帰りなさい、寒かったでしょ?」
「まぁねー。あ!ねぇ、お母さん、クリスマス出掛けるね!」
「……あら、明美ちゃん?」

お母さんの問いかけに私は
思わず黙ってしまう。

「違う、よ」
「あらあらあら……彼氏さん?」
「………うん………」

お母さんはちょっと驚いた顔をしたけどすぐに笑って
嬉しそうにうなずいた。

「そう……目一杯可愛くしていきなさいよ?」
「うん!」
「今度、連れてらっしゃい」
「わかったー」

今日は、ほんとにいい日だ。
クリスマスも、過ごせることになったし
イルミネーションも見に行ける。

ほんとに、幸せ………



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