君がいた夏

距離




「で?!」
「で、って・・・・」

私は喫茶店で
明美に屋上でのことを話した

「普通に、しばらくして抱き締めてた腕を解いて」

私に乗り込むように明美は
身を乗り出す

「・・・・教室に帰ったけど」
「は?」
「だから帰ったけど」
「・・・・菜穂?」
「はい?」

私は首をかしげる

「あんたはアホかっ!!!!」
「えぇ?」
「抱き締め返したってことは先輩もあんたを好きだってことでしょうがっ!!!!」

私は
喫茶店に響く明美の声に苦笑いする

「いや、それはないんじゃないかなぁ」
「なんで?」

私はとりあえず明美を座らせる

「いや、そういう雰囲気じゃなかったし、先輩もだいぶ弱ってたから・・・」
「・・・・・」
「明美」

私は
納得がいかないからか、黙りこくってる明美に声をかける

「なに?」
「私ね、今は先輩のそばにいるだけでいい。・・・隣じゃなくて少し後ろらへんを歩く」
「・・・なにそれ?」

明美は頬づえをつきながら
笑う

「先輩が苦しいとき、先輩を支えられる位置にいたいってこと」
「・・・・菜穂は優しすぎるの」
明美は私を見つめる

「先輩に彼女ができたら、隣を歩く人ができたら、菜穂は・・・その立場にもいられなくなる」

私は下を向く

甘い考えなのかもしれない・・・
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