お望み通り、構ってあげようか



「…君にしては可愛いね」



恐る恐る上目遣いで様子を覗えば、悪戯めいた視線のなかに、剣呑な影がチラリと見え隠れ。

これから、何か良からぬことが起こるぞ。

直感的にそう感じて、だけどそのどこか危険な香りに、本能が惹きつけられる。


獲物をどう甚振ってやろうかと思案する捕食者の目なのに。



「俺は言いたいことがあるなら口で言いなさいと、常々指導してきたつもりだったんだけど」



私を射竦める切れ長の瞳は、ナイフみたいにキリリと鋭い。触れたら、容赦なく切り捨てられそう。

おまけに声だって、抑揚がなく平坦で、なのにカラダの芯にずぅんと響く低音ヴォイス。

さらに言わせてもらえば、ワックスでピシッと決められた髪型も、シワひとつないキチッとしたスーツの着こなしも、正直見る者に威圧感や緊張感とかしか与えない。


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