威鶴の瞳

「実家だぁ?」



トーマの目が据わる。

正直……怖い。



「身内を俺に押しつけて、実家?」

「あーいや、その、えっと……わ、私が!私がそっちを優先してって言ったので、それで……」

「……アイツ昼間何かしてんのかよ?」



昼間昼間昼間!?

私は相当パニックになっていて、思考がうまく回らない。

病人より優先するような用事とか、仕事……でも仕事は夜だから――そうだ!!



「あの、ここのところいろいろと忙しかったみたいで、すごく疲れていた、みたいで、睡眠をとれって、私が無理やり言ったんです!ははは……」



そして私は苦笑い。

苦しい、苦しいよ、言いわけ考えるの。



「そうか」



ふっと、いきなりトーマは微笑んだ。

それは威鶴には見せたことがない顔で……。



「……そう、なんです」



思わず視線を反らして、布団に顔を埋める。

なんだか少し、アツイ。



雰囲気が少し――甘い。

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