教組の花嫁

 「無の境地には入れたかね」


 20分ほどして、道心が口を開いた。


 「いいえ」

 小波が率直に答えた。

 「どうしてだね」

 道心が、そのままの姿勢で小波に質問をした。

 「教祖様の事が気になって」

 「君は正直だね。では、これから言う質問にも正直に答えたまえ」


 道心が背筋を伸ばし、目を閉じたままの姿勢で言った。


 「はい」


 小波は道心が何を質問するのか、次の言葉に息を潜めた。

 「君はなぜ千葉君の申し出を承諾したのかね」

 道心が、いきなり鋭い質問を小波に浴びせた。


 「千葉様の熱い熱意に負けたからです」


 「私を侮ってはいけない。君の青春を犠牲にさせたものを正直に言いたまえ」


 (教祖様は私を見透かしている。嘘はつけない)


 小波は道心の鋭い洞察力に恐れを成した。






< 138 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop