眠り姫の唇


岩城は眉を寄せて、少し申し訳なそうに訪ねた。


「…三十路の体力とは思えないですね、岩城さん。」


「まだ29だって言ってるだろ。」


瑠香がちゃかすと、ムスッとして岩城は瑠香を抱き締める力を強める。

瑠香の白い背中を、さらさらと岩城の手のひらが何度も往復する。


「それに、1ヶ月前からずっと我慢してたって言っただろ。今まで素直に抱かれなかったお前が悪い。」


「そんなの知りません。」


いつもの岩城の言いがかりに、瑠香は腕の中で器用にくるりと体制を変えて背を向ける形になる。


そんなスンッとした瑠香に、岩城は唇を寄せて意地悪くなにかを囁いた。

「な…っ!」

顔を赤くして振り向く瑠香に、岩城は勝ち誇ったような顔をする。

「なに言ってるんですか!」


「別に嘘は言ってないだろう?」

「……っ、」

その悔しそうにキツく閉じられた唇に、岩城は微笑みながらキスをした。


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