眠り姫の唇



それがさも当然のごとく広い胸板に抱き寄せられ、キツく身体に巻き付くたくましい腕が全く言うことを聞いてくれない。


「やぁっ、いっ、岩城さん?寝ぼけてます?」


それか誰かに間違えてます?!


後者ならかなり腹立たしい。


そう耳元で叫べば。



「…ふぅ、ん…、ウルサい…。」


仕返しとばかりに身体に響く重低音が瑠香の耳を甘くくすぐる。


まだ目を瞑りながら、鬱陶しそうに、岩城は瑠香の身体を弄りはじめた。


(う、ぎゃぁぁあぁぁ!)



当然の権利とでも言うように、我が物顔で自分の身体を這う艶めかしい指に理性を失いかける。


次に岩城は、止めてよ!と言いかけた瑠香の唇を否応なく塞いでいく。


「ぅんっ、…っ!」


あ、ヤバい。


瑠香は思った。



このキスは、ヤバい。



はむはむと。

まるで美味しそうに何かを食べるような野獣じみたキスに、身体の芯から溶かされてしまう。


この人どれだけキスのレパートリー持っているんだ。



共通点はどれも極上ということだけ。



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