恋涙

「でも、樹里はなんだかんだ言って結局大阪行って良い人みつけちゃってさ。」


咲が妊娠五か月のお腹をさする。



「だよな。あの樹里が結婚だもんな。」


秋人も頷く。




樹里は大阪に引っ越し、高校を卒業したあと、就職した会社で16歳年上の人と付き合いを始め、交際約半年で結婚を決めた。



相手の年齢にも驚いたが、そのスピード婚にも私たちは呆れるほど驚いた。




「あんなことがなかったら秋人が樹里と結婚してたかもしれないのにね。私のせいだよね。」



私は秋人の目をじっと見た。




「いや、もし結稀兄ちゃんが生きていたとしても、俺と樹里は別れてたよ。」




「なんで?」



私より先に咲が尋ねる。




秋人はちょっとためらって話し始めた。



「樹里は俺が絢香のことが好きだって最初から気づいてたんだよ。」





「えー!」




それは驚きだった。



図書館でのキス事件も、樹里は知らないはずなのに・・・。




「だってふられたの俺だもん。」




「えー!」



「『私のそばにいていいのは私だけを見てくれる男よー』って言って。」



秋人は笑っていた。



「それは知らなかった・・・。」



私と咲も一緒になって笑った。





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