棘姫

なんで一人なのか?

そんなこと聞かれてもちょっと困る。



「なんとなく…かな。
それに誰かとベタベタするの、あんまり好きじゃないから」

『ふーん。
でも一人だとつまらないでしょ?』

由愛ちゃんが頬杖をついた。



"一人はつまらない"
そうなのかもしれないね。


でも、由愛ちゃん。

あなたも私と同じことをしてる気がするよ。



「由愛ちゃんは楽しい?」

逆に私から聞いてみた。


氷を沈めていたストローの動きが止まる。

本心を探るように由愛ちゃんをじっと見つめると、すぐに視線を逸らされた。




由愛ちゃんと出会う前から、彼女のことは一応知っていた。


"可愛くて成績優秀。
誰にでも優しい完璧な子"

こんな噂を耳にしていたから。



廊下で時々見掛けた由愛ちゃんは、たくさんの友達に囲まれていた。

自分の存在を隠すかのように、回りを人で覆っていたね。


その輪の中心でいつも笑っていたけれど、私には無理して笑ってるようにしか見えなかったよ。


たくさんの友達に囲まれながら、由愛ちゃんはその子達と上手く距離をとっていた。

決して誰も、心の中へ踏み込ませないように。





「由愛ちゃんはいつも、たくさんの友達と一緒だよね。でも、私には…由愛ちゃん、全然楽しそうに見えないよ」

由愛ちゃんは瞳の色を大きく揺らす。


私は言い切った。

"その話題には触れないで"

由愛ちゃんが瞳の奥で、そう訴えていることに気付いてたクセに。



やっぱり私は…
冷たい。


誰かを傷付けることしか出来ないなんて…



< 48 / 134 >

この作品をシェア

pagetop