棘姫
金額は決めてある。
最低でも2万は出す奴じゃないとあたしは相手にしない。
こんなバカなことしてるあたしに、2万分の価値があるかなんて分かんないけど…。
とにかく1万なんかじゃダメなんだ。
ここまでこだわるのには、もちろん…それなりに理由がある。
それは…―‐‐
『あれ?
由愛ちゃん?』
聞き覚えのある声。
振り返れば、ほんのり頬を赤らめたスーツ姿の男。
少し酔っているよう。
どっかで見た顔だな。
『またお小遣いくれる人探してるのかい?』
馴れ馴れしく肩に手を回された。