こちらミクモ探偵事務所5



「え?中村さんのこと?」

紘子の部屋から、千尋の部屋へと移動する。
中村さんの事を教えてほしいと言うと、千尋は少し驚いた顔をした。

「うん。俺さ、よく中村さんのこと知らないんだよね」

「そっか。まぁ、ケイちゃんは久し振りだったしね」

千尋はチラリと紘哉を見ると、ゆっくり話し出した。

「中村さん、いい人だったけど厳しかったよ。家が結構いいとこさんで、私も何回か怒られたりしたんだよね。
お父さんも、それなりに苦労したみたい」

「おじさんが?何で?」

みどりから聞いた話によると、二人はそれなりに仲が良かったらしい。
それなのに、千尋は信夫が苦労したと言っている。

恵一は首を傾げた。

「ほら、後輩に怒られるって、先輩として面目丸潰れでしょ?だからだよ」

「ふーん……」

千尋の目が泳いでいる。
恵一が全てを話すよう彼女を睨むも、あまり効果は無いようだ。

「分かった。ありがとう」

恵一が立ち上がり、それに倣って二人も立つ。

こうなったら最終兵器を使うしかない。
紘哉は《宝箱》を千尋の部屋の隅に置き、部屋を去った。

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