踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~

初動捜査

三上響子が殺害されたことは警察から彼女の家族と学校側に知らされた。
それから一時間後、小島と恵は美しが丘中学の校長室にいた。今朝発見された被害者の通う学校だった。彼らがそれを知ったのは被害者の持っていたと思われる鞄に生徒手帳があったからだった。
 校長室には二人の他にこの学校の校長と教頭、それに担任の野本義男、副担任の吉田恵子がいた。野本は男性としては背が低いようでおよそ一六五㎝くらいに思えた。歳は四十歳半ばだろう。それに引き替え副担任の稽古の方は背が高く野本とほぼ同じくらいだった。歳は小島とともにいる恵と同じように思われた。小島と恵、校長と教頭は古めかしい応接セットに、野本と吉田はパイプ椅子に座っていた。
 小島は学校側に訪問した理由と今まで判っている状況を簡単に説明した。校長室の雰囲気は忽ち重いものになった。
「それで、三上君が亡くなったのは?」
 校長が沈んだ声で言った。
「まだはっきりと言えませんが、私達は自殺に見せかけた他殺と考えています」
 小島の言葉に学校側の四人は互いの顔を見合った。誰も口を閉ざしてしまった。
 静かになった校長室に遠くから生徒達の声が聞こえてくる。このショッキングな事態に一時限目の授業は自習になったからだった。
重く口を閉ざしてしまった四人に対して、その口を開かせるように小島は咳払いを一つした。
「ごく普通の生徒だと聞いていますが…」
 校長は担任の野本の方を見た。同意を求めているような表情だった。
「ええ、成績も素行も目立ったところはありませんでした。」
 恵がそれに同意するように頷く。
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