踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
 美里は再度、佐枝の気持ちを治めようとしたが、今度は時間をかけても彼女の興奮は治まらなかった。美里の気持ちは焦り始めていた。早く美鈴の後を追いたがったが、興奮している佐枝をこのままには出来ないし、美鈴がどちらの方向に浚われていったかも判らなかった。誰か手を貸してくれる人はいないかと辺りを見回すと小太りの中年女性が歩み寄ってくれた。
 後は美鈴の後を追うだけだ。
 美里がそう思った時、今まで倒れていた魔鈴が体を震わせながら起き上がり、美里の目をじっと見つめてきた。まるで美鈴が連れ去られてしまった方向が判るとでもいいたげなしっかりとした視線だった。
 美里はこの使い魔に賭けてみようと思った。その決断を待っていたかのように魔鈴は道路に出ると走り始めた。
 美里は歩み寄ってくれた女性に佐枝を任せると急いでバイクに跨がり、前を走る使い魔を追っていった。

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