冷めた指先で、火をつけて
「……冷たいっ!」



 けっして涼しくない室内だというのに、彼の指先はひんやりとしていた。

 彼はいつも、緊張すると指先が冷たくなるのだ。

 その冷たい指が私の肌をゆっくりと這い上がってくる。

「な?」

「何が『な?』……なの」

「ドキドキしてたんだ……お前に。とても直視していられない」

 彼の指が私の柔らかい膨らみを探り当てる。

「温めてくれよ。それまでは、帰さない」

 そう言って彼はクスッと笑った。首を回してみると、はにかんだ顔が間近にある。



 もしかして、ホントに照れてる――?



 付き合い始めてもうすぐ半年。もう飽きられたのかと思っていたけど……。



「あっ……」

「服もかわいいけど、そのままのお前がいちばんだよ」



 温まった彼の指が、私の体に火をつける。

 冷えかけた心を熱く溶かしながら――。





[END]
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