太陽の竜と闇の青年
「ひ、姫様!!そ、そこは危険ですと何度言ったら分かるんですか!?」


塀の下から侍従の声がした。


「ルウ!いったい何見てるのさー。僕をおいて、一人でいいとこどりってのはヒドイんじゃなーい?」


弟の声もする。


振り向くと、弟も塀を器用に登ってきた。


「結局登ってくるんだ」


私が微笑みながら言うと、フウは、はにかんだような顔をしながら私の隣に腰かけた。


「まぁ、ここは僕らの特等席だし」


私たちがここに連れてこられて養子となったとき、王宮を自由に歩くことを許された。


命を狙われている身なため、見張り付きで。


私とフウはそれが嫌で、見張りも登ってこられない景色のいい場所を探し、この塀の上ということになったのだ。


「でもさー、長い間ここにいると、下の侍従が可哀想だよ?もうずっと叫んでるから声ガラガラじゃん」


可哀想に、とフウは言っているが、顔は満面の笑みだ。


「サクラには悪いとは思ってるけど、やっぱ、ここがいいじゃん」


私は、喉をくっくっと言わせながら笑った。


「まぁね。今日は風もいい感じだし。あ、くず餅持ってきたんだ。食べるー?」


フウが着物の懐からくず餅を取り出した。


「うん。食べる」


私は、くず餅を口に中に放り込む。


「そーいえばさ、また断ったんだって?寸法計るの。サクラがブツブツ言ってたよー」


私は、下にいるサクラをみた。


フウの侍従ラカというかなり剣術の腕のいい顔の整った男性と顔を真っ赤にしながらはなしていた。


「サクラって、絶対にラカが好きだよね。ラカは独身なんだから、さっさと告っちゃえばいいのになぁ。絶対に叶う相手だと思うんだけど、フウはどう思う?」


すると、フウも下を見て言った。


「まぁ、ラカは恋とかあんまり興味なさそうだけど、サクラとはなしてる時は楽しそうだよねー。ここは一つ、サクラに頑張ってほしいね。って、ルウ話変えないでくれる?父さんも言ってるけど、そろそろ、男性の服を着るのはやめなよー。一応、ルウも女性なんだし」


「一応って・・・」

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