太陽の竜と闇の青年
「よっと……」


ピョンと小さく飛んで立ち上がった。


「えっとー……。まず、私の弟が失礼しました。いや、そんなに怒らないでくださいよ。本当に申し訳ない」


手を目の前でポンと重ね合わせて私は牙城さんに謝った。


それから、


「えっと、そちらのお方も弟を止めてくれてありがとう。弟はたまに壊れてしまう部分がありまして。いやー、感謝感謝ですね」


と、牙城さんの傍にいた男の人に言った。


男の人は全身黒ずくめで目しか見えなかった。


けど、その目は私をしっかりと捕らえていて、逃がさないようにしていた。


私は襖の近くまで行って、ストンっと座った。


「ここの言葉では正座って言うんですよね。この座り方のこと」


私は少し楽しげに正座した。


牙城さんも笑って言った。


「えぇ。あなたは何でそんなに楽しそうなんですか?」


私はニッコリと笑った。


「だって、楽しいじゃないですか。新しいことを知る喜びってなかなか味わえませんよ?」


牙城さんの傍にいた男が、私の前に来た。


「もし、俺が今からお前を殺すって言ってもか」


私は目を細めて男をみた。


それから、やんわりと笑った。


「怖くない。だって、あなたは私を殺そうとしていないから。つまり、あなたからは私を殺そうとする気持ちが感じられないし、私もあなたと殺り合おうとは思っていない」


男は少しだけ驚いた目をしたが、ふいにその目が細くなった。


私はその顔を見た。


「あなたが黒ずくめの姿じゃなかったら、その優しい笑顔がみれたんだけど……。残念だ」


その言葉を聞いた牙城さんが微笑しながら言った。


「その男を笑わせることができる少女は初めてだ。不思議な子だな」


私は苦笑した。


「聞きあきた言葉だよ」


牙城さんは興味深そうに私をみた。
< 98 / 824 >

この作品をシェア

pagetop