センセイと一緒 ~feel.Black~

2.蛍




9月中旬。

蒸し暑い夜風が街路樹を揺らして通り過ぎていく。

放課後の補講の後、鈴菜は家への帰路を歩いていた。

バスを降り、住宅街を過ぎると公園や田んぼが広がっている。

いつもは住宅街の中を真っ直ぐに通り過ぎるのだが、鈴菜はふらりと田んぼの方へと歩き出した。

……少し考えながら帰りたい。

覚束ない足取りで田んぼの脇をゆっくり歩いていると、夜闇の中、何か光るものがふわふわと飛んでいるのが見えた。

……蛍だ。

こんな時期に蛍がいるなんて珍しい。

鈴菜は足を止めて、ふわふわと舞う光を眺めた。


『この時期に舞っているのは、ヘイケボタルだ。ゲンジボタルとは違って、清流ではなく田んぼや湿原で繁殖する』


遠い昔、柊史がそう教えてくれた。

鈴菜は目を細め、田んぼを見渡した。

もうピークは過ぎたらしく、あまり数は多くないが淡く点滅する光が幻想的だ。


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