センセイと一緒 ~feel.White~



8月の頭。

引越しを翌日に控えた日。

鈴菜は夕方、家を飛び出して神社へと向かった。

……明日になれば、もう会えない。

もう、今日しか会えないのだ。

と、境内に走り込んだとき。

井戸の方からいつもの笛の音が聞こえてきた。

『井筒』だ。

鈴菜は少年の前へと歩み寄った。


「……鈴菜……」

「ナオくん……」


鈴菜は少年の顔を見上げた。

この瞳も、顔も……

全てを覚えておきたい。

幼心にそう思った。

そんな鈴菜の前で、少年は笛を見つめながら言う。



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