誘惑のクラン(血族)
「璃子さん、お口に会いませんか?」


問いかけるような優真に璃子は我に返り、音羽から視線を動かした。


「い、いいえ。とてもおいしいです」


そう言って、つけ合せのニンジンを口にした。


美菜は碧羽と楽しそうに話をしている。


こんな機会、滅多にあるものではない。


トラブルに見舞われた旅行だけれど、親友が楽しそうで本当に良かったと思った。


不意に視線を感じて視線を動かすと、音羽と目があった。


璃子はにこっと笑みを浮かべるたが、無表情のまま視線を逸らされてしまった。


気にしないようにして、目の前のステーキにナイフを入れた。

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