正しい殺人事件

『そうだね…、気に入ったよ。って、言ったらどうする?』

「…仲良くしてやるよ、その先輩と。先輩の顔、覚えてみる」

奈々は最後の一口を口に押し込むと、クレープの包みをぐちゃぐちゃと丸め、ごみ箱に向かってぽんと投げ入れた。

『ナイスシュート』

ぱちぱちと言葉で拍手をする幼なじみ。

「ごまかすなよ、幼なじみ」

『いいよ、覚えなくて。僕は奈々ちゃんがいれば十分だからね』

なら、言わなくて
いいじゃんか。

席を立った奈々は、足をアパートに向ける。

『ごめんね。奈々ちゃんは昔のこと、話すの嫌いだもんね』

「…好きな訳、あるか」

< 50 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop