【DARK・EYE〜暗闇の瞳】

彼女の声は震えていた。

俺は知っている。

世界が闇にのまれてゆく、悲しい感覚を…。

眼の前が真っ暗で、何も…何も見えなくなっていく恐怖を…。

知っているが故に、俺は彼女に何もしてやることが出来なかった。

「暁…返事して…?」

「一葉…」

俺がそう囁くと…

「良かった…無事なんだね…?良かった…」

一葉は、もう何も見えない瞳から…涙を、血に染まった…赤い涙を流した。

「あたし…ね?暁がいてくれたから頑張れたんだよ?ありが…と。だから、お願い…あたしの分も…ッ!!」

ケホッ…ゴホッ…

「あか…つ…き…」

一葉は血を吹き、意識を失った…。

最後に…俺の名前を呼んで。

そして…息絶えた。

彼女は最後にこの世界を見る事なく死んでいった。

守りきれなかった俺に、文句を言うわけでもなく、恐怖を訴えるわけでもなく…笑顔で死んでいった…。

辛かっただろう…?

痛かっただろう…?

苦しかっただろう…?

彼女は暗闇に飲まれながら、この世を去った。

何故…俺でなかった?

何故…俺が死ななかった?

俺が死んでも、悲しむものなどいない。


それなのに、神様…どうして一葉を…ッ!!

俺は、冷たくなった一葉の体を力強く抱きしめ、夜が明けるまで離さなかった。

月明かりに照らされるその姿は、まるで眠っているようで…

いつの間にか彼の瞳からは、雫が零れ落ちていた。
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