オレンジ・ドロップ

 「やっぱり中までついて来てよ~」

 小声で頼む


 「それは嫌だよ。入口までって約束だもん」


 「分かった……じゃ…行って来る」

 彼女は嬉しそうに小さく手を振る


   コンコン


 「どうぞ、開いてますよ」

   スー・ハー・スー・ハー……

 大きく深呼吸を沢山する

 「失礼します」

 書類だか楽譜だか分からないが紙と睨めっこをしている宮藤先生

 一瞬顔をあげる

 今日は機嫌がいいのか爽やかな笑顔だ

 この先生、笑ったりもするんだぁ

 怒り顔しか見たことないのである


 「どうした?」


 「あの……すみませんが、やっぱり演劇と掛持ちは厳しいので、合唱を……辞めようと思うのです」

  怒られるかなぁ

  それとも小言かなぁ

  ドキドキドキドキ……
 首をすくめる私

 次の瞬間意外な言葉が飛んできた


 「そっか。やっぱり両立は大変だよね? 短い間ご苦労様。演劇頑張ってね(笑)」

 あっさり承諾された


 「ありがとうございます……今までありがとうございました」

 なんか拍子抜けしたわ


 「気晴らしに遊びに来るのは構わないぞ♪」


 「ありがとうございます」




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