片想いだったね


「……翼、もう出よう?」

「………ん~。」


私はこの場所から早くに立ち去りたくて、翼の腕を引っ張る。





「教会は結婚式だけじゃないよ~。祈る場所でもあるんだって~。昔の人間てさ、俺らにわかんね~苦労したじゃん?すがりたくなるんだろうね~。」


「…………………。」


「美紀の悩みも俺の悩みも、歴代ここに来た人の中で絶対ワーストくだらね~よ。」


「慰めてるしょ?」


「は?なんのこと~。」


「わかってるもん。」


「カンチカンチ~。自惚れないで~。美紀のこと慰める余裕は俺にはないから~。」




そう言いながら、静まり返った教会の建物の中で笑いながら話す私と翼。


声が響いて入り口に座っている管理人さんがジロリと睨む。




翼は絶対気付いている。









「………ありがと。」



声が小さくなったのは、管理人さんに睨まれたからだから。


照れたわけじゃないからね。


そっちこそ勘違いしないでね。







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