片想いだったね
「明日だね、本番。どう?」
「う~ん、やれるとこまでやってきたかなって感じですね。」
沢先輩はちょっと吹いて良い?と言って、まっすのトランペットを借りて音を出す。
久しぶりに聴く沢先輩のトランペットの音色。
まっすの楽譜を見ながら軽く流す程度に吹いているが、沢先輩は私が思ったことと同じことを口に出す。
「やっぱり前みたいな音は出せないわ。吹奏楽辞めてからけっこう年月経ってるし。」
まっすに残念そうにトランペットを返す。
私もまっすもそんな事ないですよと一応フォローする。でも沢先輩はニコッと笑って、
「これが当たり前。でも私が吹いてたのは事実だし?吹けなくなったからって私が終わるわけじゃないから。」
沢先輩は少し染めた髪の毛をなびかせて、
「はい、休憩終わり~!私に聴かせて~!」
と、体育館のど真ん中に座って皆を席に戻す。