記憶 ―砂漠の花―

しかし、このまま奴等をただ待つわけにもいかない。
取り囲まれて、身動きが取れなくなってしまう。


「ねぇ、瞬間移動して城下町の人たちに紛れたら?発見されにくくない?」

アズも私の思い付きに賛成したが、世の中には様々な街があるようで、そんなに甘くはなかった。


「駄目だ。かえって目立ってしまう…。この街の住民は9割りほとんどがウィッチ。普通の人間が目立つ。」

先生はそう言い、金髪の私たちを見た。


「普通の人間たちは?」

アズが首を捻る。


「それは…、地下の街サザエルか…、ほとんどが『ゴザ島』だ…。」

沈んだ声で言いにくそうに、視線を窓の外に向けた。

「そんな…」


『ゴザ島』。
先生の言葉は、奴隷たちを意味していた。

彼らの姿を思い出してみると、いずれも泥で黒ずんではいたものの、金髪だった。


これがマルクのやり方、マルクの支配する国…。
私たちは呆然とする。


――ヒュンッ…

そんな音がして、
窓の外が明るく光ると同時に、


「いかんっ…!離れろ!!」

先生が窓際から離れ、私たちにそう指示した。


――ガシャァ…ンッ!!


窓ガラスが割れた。
私たちは壁側に避難する。

< 152 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop