記憶 ―砂漠の花―

そう首を小刻みに振り、私はアランの手を引き止め懇願する。

それも虚しく、困った顔で拒否された。


『ちゃんと話をしろ』
そう青い瞳で、私の手を引き離しながら語った。


「…キース、傷の手当てをしよう…?あと腹も減らないか?飯の準備もしよう…」

「…あぁ…、そうだな…。」



二人が出ていった後に残されたのは、

長い静かな時の流れ。

私はただ、静かにアズの言葉を待っていた。


「……何か…言ってくれ…」

私は、何も言えなかった。
言葉を探せない。


「……俺は…間違ったか…?」

「………」


間違えていない。
正しい…

でも、声が出ない。
出せない…


「…俺はお前を愛していた…心から…!」

「……!!」

私の瞳からは、また一筋の涙が溢れる。


――『愛していた』

アズは確かにそう言った。


「……そんなにまで…泣いているのは、お前も…俺を愛してくれていた、…と思っていいか…?」


『愛してくれていた』

貴方の中では…、
もう…

――過去形なんですね。

分かりました…


私は大粒の涙を落としながら、こくりと頷いた。

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