Ghost of lost
 そのとき、勇作の顔のすぐ横を何かが飛び去り、壁仁尾当たって砕けた。何が起こったのか解らない勇作は咄嗟に振り返った。そこに黒い固まりが飛んできて彼の顔に当たった。 勇作はその衝撃で思い切り壁に叩きつけられる。
「誰!」
 リサが目覚め、ある一点を睨みつけて叫ぶ。 勇作もリサの視線の先に視線を投げる。
 そこに、それはいた。
 がっしりとした体格の男性と思われる黒い陰が二人の視線の先にたちはだかっていた。 その陰からは強い悪意が感じられる。
 陰は全身黒ずくめで表情が見えない。そして輪郭がぼやけている。
 明らかにこの世のものではない。
 倒れ込んだ勇作が体勢を立て直そうとすると黒い陰の二の手、さんの手が放たれる。それはラジカセであり、パソコンであり、本でもあった。
 勇作は両腕で頭をかばいながらそれらを必死によける。よけながら自分に有利な位置に移動していくのだが、その願いは果たされず、ついに部屋の片隅に追いつめられてしまった。 その正面に勝ち誇ったように黒い陰が立ちはだかる。その背後から鋭く陽受かるナイフが迫りあがってくる。
「やめて!」
 左からリサの叫ぶ声が聞こえる。
 その瞳は恐怖で震えている。
「なぁに殺しはしないよ。おまえが十分に苦しんでからだ」
 黒い陰はリサの方に向き不気味な笑みを浮かべる。
 そして浮いていたナイフがやのように宙を走り勇作の左太股をとらえた。
 焼けるような痛みが勇作の身体を走る
「いやあぁぁぁ」
 リサの叫ぶ声を聞きながら勇作は自分が暗い闇に落ちていくのを感じた。 
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